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執筆者
shimpei
細川真平 1964年生まれ。音楽ライター/エディター。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイ・ヴォーン他のCD/DVDのライナーを手がける。また、音楽誌、ギター誌、ウェブ等にも幅広く執筆。
ギターは絶対ストラト主義。
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第6回 肝に銘じた
2007年02月27日

前々回にも書いたが、脳科学者の茂木健一郎が面白い。
脳科学者と言いながら、バリバリの理系ではなく(実際に理学部のあと、法学部も卒業している)、現代の脳科学の知識を使って、人間の心や、文化や、芸術・文学・思想などに斬り込んでいく様が面白いのだ。
小林秀雄、ニーチェを、脳科学というキーワードを使って読み解く……というよりも戯れる、という感じかな?
そう、この「戯れる」という感覚が、ぼくにはとても心地いい。
なんだか、戯れなければ、閉じ込められてどこにも到達できない気がしてしまう。

さて、茂木さんが自身のブログに興味深い話を書かれていた。
文楽の太棹三味線奏者である鶴澤清治さんと対談をしたとき、鶴澤さんはこんなことをおっしゃったそうだ。
「難しいのは、あまりうまく弾きすぎてはいけないということです。込み入った旋律を速く完璧に弾いても、お客さんを感動させることはできない。あぶなっかしく、やっと弾いていると見えて、実は見事に弾き終えるというようなときに、聞いている者の心が動くんですわ」
茂木さんはこのお話に感銘を受けたようだが、ぼくも同じ。
これはすべての芸に通じることだろうし、もちろん同じ弦楽器ということもあって、ギターにもそのまま通じる話だと思う。
完璧でなければ芸にはならないし、ただ完璧に見えるだけでは芸ではないのだと思う。
難しい。
これは、文章にも通じることだと、肝に銘じた。

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第5回 ファンとしての思い、プロとしての矜持
2007年02月22日

Charを初めて観たのは、NHKの番組でだった。
'77年8月。
『NHKロック・フェス』の映像だ。
当時ぼくは12歳、中学1年生。
坊主頭、バスケット部に所属、ギター歴は2年、でもエレキはまだ持っていない……という田舎の少年だった。
放送は夕方で、窓を開け放したまま観ていたら、何ヶ所も蚊に刺された覚えがある。
クリエイションも出ていて、テレキャスターを持った竹田和夫がすごくかっこよかった。
でも、衝撃的だったのはCharだ。
白の衣装に帽子、のけぞってムスタングを弾く姿は、今でもぼくの心に刻み込まれている。
あのときのまま。

Charみたいになりたいと思った。
だからそれ以来、何をさておいてもギターの練習に励んだし、うまくもなった。
Charのライヴを観たいから東京へ行きたいと思い、東京の大学へ進学した(そのころにはもうPink Cloud時代になっていた)。
大学ではPink Cloudファンのベーシストとドラマーとバンドを組んだ(そのベーシストとは今でもバンドをやっている)。
上京後、ほとんどのライブに足を運び、横浜で初めてサインをもらうことにも成功した。
プロになるのを諦め、大学卒業後は電機メーカーに就職したけれど、すぐに辞めて出版社に入社した。
音楽誌の編集者になり、10代の女性がターゲットの雑誌にもかかわらず、Pink Cloudを紹介した。
その会社から出ている他の音楽誌の編集長から頼まれ、初めてCharに取材した。
取材をしたアーティストといっしょに写真を撮らせてもらい、サインをもらったのはそのときが初めてだ(そんなことをするのは編集者にとって恥だと、ぼくはかたくなに思っていた)。
そのときのCharとのツー・ショット写真と、『インデックス』のジャケットにもらったサインは、今でもぼくの宝物だ。

独立し、音楽ライターとなって3年目の昨年、Charにインタヴューをした。
初めてインタヴューしてから、16年の月日が流れていた。
そのときの模様が、このTARGIEのスペシャル・コンテンツとしてアップされている映像だ。
Charへの思いと、プロのライターとしての矜持、自分の中でそのふたつのバランスを取ることに、非常に苦労したインタヴューだった。
あることを聞こうとしたら、「そんなことはファンなら知ってることだから」と断られた。
心の中で叫んだ。
「もちろんぼくだって知ってるよ。誰にも負けない、あなたのファンなんだから。でも、それについて、あなたの口から聞きたいんだ」と。
でもぼくはプロだから、それを口にすることはできなかった。

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第4回 脳とギター
2007年02月16日

先日、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の司会を務めるなどTVでも活躍している、脳科学者の茂木健一郎さんの講演を聞いた。
脳と子どもの創造性に関する内容で、非常に面白く、かつ、ためになった。

さて、その中で印象に残ったのは(最初から最後まで、印象に残る話ばかりだったのだが)、「何かを行ってうれしいと感じると、脳内にドーパミンが分泌される」ということ。
これはよく言われているとおりなのだが、肝心なのはそのあと。
「うれしいと感じ、ドーパミンが出ると、その行動は強化される」。
これはどういうことかというと、ドーパミンが分泌されると、脳は心地よい状態になる。
一度そうなると、脳はその状態を再現しようとする。
そのために、その行動に関する脳内の回路を自然と強化するようになる。
その回路を強化する動きのことを「強化学習」と呼ぶのだそうだ。

ギターがうまくなる過程も、まったくこれと同じだと思った。
最初からうまく弾ける人などいない。
だが練習するうちに、たとえば昨日までできなかったチョーキングがふとできるようになる。
「おー、やった、できたじゃん!」
このとき、脳内にはドーパミンが噴出している。
そして脳はこの快感を再現しようとして、チョーキングという行動を行った回路を強化するのだ。
そして、もっとうまくなるともっとドーパミンが出てもっと回路が強化され、そうするともっとうまくなってもっとドーパミンが出てもっと回路が強化されてもっとうまくなり……。
この繰り返し、つまり「小さな成功体験」の積み重ねによって、人はギターを習得していくのだ。
そして、これはぼくの想像だが、小さな成功体験を積み重ねていくうちに、どこかで大きな飛躍があるのだと思う。
総合的に、そして圧倒的に回路が強化される瞬間、とでも言うか。

ジェフ・ベックも、エリック・クラプトンも、ジミ・ヘンドリックスも、Charも、みんな小さな成功体験を積み重ねたに違いない。
きっと、短期間で数多くの。
それが大きな飛躍へとつながったのだと思う。
その大きな飛躍の結果を、人は「天才」と呼ぶのだろう。

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第3回 時代考証してるじゃん!
2007年02月13日

昨日、映画『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』を観てきた。
映画の感想などは、ぼくが書いている別のブログをご参照いただきたい。

http://playlog.jp/otonano-1980/blog/2007-02-11

ここで書きたいのは別のこと。

舞台は1990年。
阿部寛演じる、大蔵官僚(そういえば、大蔵省っていうのも、今や過去の遺物なんですね)の、ひとり暮らしの部屋。
これがまた、トレンディー・ドラマに出てきそうなオシャレな部屋で。
それはいいとして……。
片隅にギターが立てかけてある。
それが、フェンダー・ストラトキャスターの初代エリック・クラプトン・シグネイチャー・モデル。
ああ、レースセンサー・ピックアップだ!
ちゃんと時代考証してるじゃん!
そんなことで喜んでいたのは、映画館の中でぼくだけだったと思う(笑)。

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第2回 体温がいちばん伝わる楽器
2007年02月06日

ギターって、いちばん人の体温が伝わる楽器じゃないかと思う。
スタンドに立てかけたギターを手に取る。
抱きかかえる。
この時点では、ギターは少しひんやりしている。
弾きはじめる。
最初は優しく、そして、ぎこちなく。
まるでお互いの今日の調子を確認し合いながらボールを行き来させるピッチャーとキャッチャーのようでもあるし、今日のデートを最高のものにしたいと願っている若い恋人同士のようでもある。
いつの間にか、夢中になって弾いている。
ピッチャーはキャッチャーのことを信頼し、ただ彼のミットにボールを投げ込むだけ。
若き恋人たちは、自分が心から楽しむ姿が、相手を心から楽しませていることに気づき始める。
ひんやりしていたはずのギターは、もうぼくの体温と同じになっている。

ギタリストはどんなときでもギターを弾く。
うれしいときも、悲しいときも、何があっても、何がなくても。
どんなときでも、ギタリストの体温はギターへ伝わる。
それとともに、喜怒哀楽を共有できる。
慰めてくれることもあれば、叱ってくれることもある。
黙って話を聞いてくれることもあれば、盛り立ててくれることもある。
励ましてくれることもあれば、一緒に泣いてくれることもある。

だから、ぼくはギターを弾くんだ。

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