ギターの楽しみ方は人それぞれ。
いろんな楽しみ方があるし、いろんな接し方がある。
それでいいと思う。
でもぼくにとっては、ギターをいちばん楽しむ方法はバンド活動。
これしかない。
ギター・コレクションなんか何本持っていてもつまらない。
それよりも、スタジオでバンドのメンバーから、今日の音よかったね、と言われたい。
DTMでいい音が録れたってうれしくもなんともない。
ライヴ・ハウスで少しでも自分の思いどおりの音を鳴らしたい。
自分の家でどんなに最高の演奏をするよりも、人前で少しでもいいから拍手を浴びたい。
思ってみれば、最初から、人前で演奏したいからギターを始めた、ということもある。
ひょっとしたらギターをやっていなかったら、芝居をやっていたのかもしれない、と思ったりもする。
生のパフォーマンス自体が、ぼくは好きなのだろう。
でもたまには悲しいこともある。
この前ネット・オークションで購入したばかりのフェンダー・ジャパン製'80年代ムスタングは、すでにメンバーからダメだしされた。
「次はいつものストラト持ってきてね」と。
くやしい。
せっかく買ったのに!
けっこう気に入ってたのに!
でも、メンバーが正しい。
音が薄っぺら。
耳にキンキン響く。
これらはぼくのムスタングが悪いんじゃない。
ムスタング自体が悪いのだ!
ちなみにぼくのは、ちょっとストラト寄りの音がする、ムスタングとしてはかなり出来のいい子ちゃんだ。
それでもダメと言われるのは、これはもうムスタング自体の問題だと思う。
まあでも、自分ちでひとりで弾いてる分には、自分が気に入ってさえいればどんな音でもいいんだろうけど。
バンドだと、自分だけの問題ではなく、バンド自体の問題になってしまう。
だから、くやしくてもメンバーからのダメだしは受け入れるしかないんだなあ。
でも、ムスタングにダメだししたベーシストが以前ZONのベースを買ったとき、思いっきりダメだしして、それをお蔵入りさせてしてしまったのは、ぼくだったりする(笑)。
ま、そんなことも含めて、バンドっていうのは楽しいものなのだ。
ミニチュア好きの人ってけっこういるけれど、ぼくはけっしてそうではない。
小学生のころにはミニカーを集めたこともあるが、まあそういうのは当然のことだし、大してはまりもしなかった。
大人になってからももちろん同じ。
子どもにポケモンのフィギュアを買ってやることはあっても、自分のために買うことはなかった。
でも……これは別!
いま、巷のギターおやじの間で大流行中。
フェンダーUSAとタイアップした食玩、“フェンダー・ギター・コレクション”。
昨日、初めて2個買ったら……いちばん欲しかったレイク・プラシッド・ブルーの'62年ストラトキャスターをゲット!(本気でうれしかったです……笑)。
もうひとつはバタースコッチ・ブロンドの'52年テレキャスター。
これは今度、TARGIEスタッフでもある“テレ屋”のNさんにプレゼントしよう(お楽しみに!)。
いやしかし、よくできている。
弦は張ってあるし、アームは付いているし(ストラトの場合)、ボディ形状もかなり完璧!
しかもギター・スタンド付きってのがまたニクイ。
もうほれぼれしながら眺めているのだ。
あ、でも1弦がナットから落ちてるのに気づいた。
リペアに出したほうがいいかなあ?(笑)
使い込まれたギターが発するオーラには、ひれ伏したくなるときがある。
優れたギタリストほど、「ギターは道具だ」と言い放つ。
しかし、その単なる「道具」から、すさまじいオーラを感じることは多々あるのだ。
先週、いくつか取材があり、2本のギターからそんなオーラを感じた。
まずはフィリップ・セイス。
彼は30歳、セカンド・アルバムが出たばかりの、ギタリスト/シンガー。
すごく単純に言えば、ジミ・ヘンドリックス、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの後継者的存在だ。
彼のストラトは'63年製。
それを手に取らせてもらった(少し弾かせてもらった)。
このギターのボロボロ具合は類を見ない。
ボディ上部に大きな塗装の剥げがあるのだが、実際に見ると剥げているだけではなく、大きくえぐれているのだ。
激しいピッキングのせいだという。
ネックの裏も使い込みすぎて、木が波打っている。
もう本当に、状態だけを見ればスクラップ間近のポンコツと言ってもいいだろう。
ところが、そこから出ているオーラは格別だった。
その2日前に彼のライヴを観、このギターの素晴しい音を聴いているからよけいそう思うのだろうが、フィリップの魂が、そして同時にロックやブルースの音霊(これはぼくの造語だが、言霊ではなく、音霊)が、このボロボロのギターにこもっている気配がむんむんとした。
そしてその翌日、日本を代表するギタリストのひとり、鈴木茂へインタヴュー。
これは当TARGIE用のスペシャル・インタヴューだったので、近いうちに動画でアップできることと思う。
彼が持ってきてくれたのはもちろん、フィエスタ・レッド(少しオレンジっぽい赤色)の'62年製ストラト。
アルバム『BAND WAGON』を初めとして、数々の彼の名演を支えてきたギターだ。
細かい仕様や改造歴などを、ご本人から説明していただいた。
いい演奏をいい音で行う/録るために、手を入れ続けているのだろう。
そういう意味で、このギターはまさにプロの道具だ。
けれども、いや、だからこそと言うべきか、ここからも圧倒的なオーラが立ち昇っていた。
'62年フィエスタ・レッド・ストラトは“鈴木茂のトレードマーク”というような言い方をついしてしまうのだが、けっしてそんな簡単なことじゃないのだろうと思う。
比喩的な意味ではなく、このギターは彼の体の一部なのだと思うし、それはつまり、彼の魂の一部だということではないだろうか。
フィリップ・セイスと鈴木茂のストラト。
それらは、本当に幸せなギターたちだと思う。