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執筆者
shimpei
細川真平 1964年生まれ。音楽ライター/エディター。
ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイ・ヴォーン他のCD/DVDのライナーを手がける。また、音楽誌、ギター誌、ウェブ等にも幅広く執筆。
ギターは絶対ストラト主義。
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Charのデビュー・アルバムを聴いて考えたこと
2012年06月21日
Charのデビュー・アルバム『Char』('76年)を、ここ最近よく聴いています。
これは日本のロック史に残る名盤だと思います。
「Smoky」と「Shinin' You, Shinin' Day」の2大名曲をはじめとして、楽曲・アレンジ・演奏ともに本当に素晴らしい。
ロック、ファンク、ソウル、ポップ、フュージョンなど、それ以降のCharに通じる音楽性の幅広さがすでに余すところなく出ていますが、21歳にしてこの幅広さということ自体にも驚かされます。
バック・メンバー、特に曲作りやヴォーカルでも貢献したジェリー・マーゴシアン、9曲中4曲の作詞を手がけたNSPの天野滋の力も大きかったのは間違いありませんが。

ギター・プレイに関して言うと、ペンタトニックだけで押し通すのではなく、コード・ノートを巧みに使ってソロを構成していく点など、この時点ですでに単なるロック・ギタリストではありません。
でもそれを、ロックのスリリングさをいっさい失わずに弾き切っている。それが、このアルバムでのCharのプレイのすごいところなのです。

さて、実は今回書きたいのはまた別のことです。
このアルバムでのギター・トーンが、僕は大好きです。
問答無用で胸に突き刺さってくるのです。
ああ、なんていい音だろう……と、1曲ごとにため息をついてしまいます。

ですが、この音って、いまギタリストの間で主流となっている音作りの考え方からは外れていると思うのです。
最近、“良い音”を表現するのに、こんな言い方をよく耳にします。
「レンジが広い」、「ハイ落ちしていない」、「音が劣化していない」、「アンプみたいな歪み」、「音圧がある」
……このアルバムでのCharの音って、まったく逆じゃないですか?
ハイが落ちていて、レンジが広くなくて、たぶんシールドやエフェクターに音が吸収されて劣化していて、いかにもエフェクターで歪ませた感じで、シャープさはあるけど音圧感はない。
でも、この音、最高じゃないですか? 少なくとも、この名盤を名盤たらしめている重要な要素のひとつだとは思いませんか?
そう考えると、結局“良い音”に方程式などないのだということに考えが行き着きます。

もう10年以上でしょうか、エフェクターではトゥルー・バイパス仕様がもてはやされてきました。
そして、バッファー仕様のエフェクターはダメというような風潮が広まりました。
それが最近になって、トゥルー・バイパスだって音は劣化する。だから、いいバッファーを使わなければダメだ、みたいな話にもなってきて……。
僕もずいぶんそんな話に乗せられてきたクチですが(笑)、本当はそんなことどうでもいいんですよね。
だいたいそんなこと言ったら、90年代より前のレコードで聴けるギターの音は全部悪い音だということになってしまいます。
「ジミヘンの音はファズ・フェイスで劣化してるからダメだ」なんていう輩がいたら、あなたならどうしますか?(殴りかかる以外に方法があると仮定して、ですけど)

つまり、ギタリストが自己表現するためにこれだと納得した音であれば、それがレンジが狭かろうが、劣化していようが、音圧がなかろうが、ナチュラルな歪みでなかろうが、関係ないのです。
もちろん、それを良い音と取るのも悪い音と取るのも、聴くほうの勝手です。
ジミの音を悪い音と思ってもいいのです。でもそれは、正しく言えば“あなたの好きではない音”だという意味だということをよく覚えておいてほしいのです。
“絶対的な良い音”も“絶対的な悪い音”もどこにもありません。

こういうことを書くと、そうかトゥルー・バイパスは要らないのかとか、レンジは狭くていいのかとか思うかもしれませんが、それも違います。
あなたが、あなたの自己表現をするときに(プロだろうとアマチュアだろうと、ギターで自己表現するという意味では同じだと思います)、劣化している音は嫌だとか、レンジが狭いのは気に入らないと思うなら、とことん劣化をなくし、レンジを広げることを追求していけばいいのです。
ただしそれは、“絶対的な良い音”を手に入れたとか、近づいたとかいうこととはまったく違います。
“自分の好みの音”を手に入れたり、それに近づいたりしただけのことです。

Charのデビュー・アルバムの音を気に入らない人もいることでしょう。
それも好みですのでまったくかまいません。
でも、「この音はトゥルー・バイパスじゃないエフェクターのせいで劣化しているからダメだ」という方がいたら、さて僕はどうすればいいでしょうか?(殴りかかる以外に方法があると仮定して)
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無題
2012年06月08日
 やることもなく昼間からダラダラと酒を飲む生活をしていると、自分のレゾンデートルがどんどん失われていく気がする。その悔しさすら酔いの中にひたすら溶け込んでいき、例えば嫉妬や、羨望や、不満や、憎しみや、悲しみも、時たま闇の中に明滅するほのかな灯りのようでしかなく、しかも通常であれば忌み嫌うようなそれらの感情にすら、何らかの生きている意味を示唆されているような親しみを覚えるようになっていく。

 CDのライナーノーツなどで、プロの物書きが「かっこいい」という表現をしているのを読むと腹立たしい。「この曲のギター・ソロはかっこいい」などと書いてある。
 ギター・ソロなんてもともとかっこいいんだよ。ギターなんてもともとかっこいいんだよ。ロックなんてもともとかっこいいんだよ。その「かっこいい」の中身(フレーズ、奏法、特殊な技、サウンド、感情、背景、その他)であるとか、他のギタリストの「かっこよさ」とどう違うのかとか、他の曲のソロとはどう違うのかとか、そういうもろもろのことを書かないとなんら意味はないと思う。その文章に対してお金を払ってもらっている以上(どんなに原稿料が安かろうと)、無料で読める音楽ブログと同じクオリティでいいわけがない。

 僕はそういう部分に全てを懸けている。そうできていると言っているわけではないし、自分はすごいと言っているわけでもない。ただ、そうしようと最大限の努力をしている、と言っているのだ。だって、かっこいいものを「かっこいい」と書いて終わりにしたら、自分のレゾンデートルは消滅するしかないではないか。それがレゾンデートルなどという大げさなものではなく、くだらない意地でしかなかったとしても。

 だが、PINK CLOUDは「かっこいい」で終りにしたいバンドだった(もちろん、改名前のJOHNNY, LOUIS & CHARも同じだ。ただ、僕が初めて彼らを観たのはPINK CLOUDになってからだったのであえてこう言っている)。
 解散後に出た『BOOTLEG』というライブ・オムニバス・アルバムが大好きだ。ここに収録された「Last Night」の終盤、“Last Night〜”というコーラスが続いている中で、Charが“Hey Johnny, what are you doing?”とアドリブで歌い、ジョニーが笑う。ジョニーが決めのタイミングを間違えたか何かなのだろうが、この部分を聴くと「かっこいい」としか言えない。これ以上の説明はできない。説明する必要はないし、説明しても分からない(きっとこれを読んでも聴いていない人には分からないはずだ)。そんなことが彼らの音楽と関係あるのかと言いたい人もいるだろう。でも、ロックなんて純粋に音楽のみで語れるようなもんじゃないだろう?

 そういう「かっこよさ」が多すぎるバンドがPINK CLOUDだった。僕は彼らのいくつかのDVDのライナーノーツを書いているけれど、執筆中にこれほどまでに「最高にかっこいいから、とにかく観なよ」で終りにしたいと思ったことはない。消滅しそうな僕のレゾンデートルを、最後の最後で繋ぎとめておくだけで精一杯だった。

 結局、レゾンデートルなどというものは、エゴと同じだ。なくても生きていけるし、むしろないほうが生きていきやすい。酔いつぶれていく中で、それらをなくすことは快感だと分かった。
 なるようにしかならないのが人生だろう。成功した人間たちの自慢話はもう聞き飽きた。太った偉そうなやつらの面は見飽きた。お前らはかっこよくない。くたばったジョニーはかっこよかった。僕は酔いの絶頂の中で、「Last Night」でのジョニーの笑い声をまた聴く。

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