AKG Original Order Tube Amp "Area 67-B"
たびたびTARGIE LABOでご紹介しているAKGアンプ工房は、基本的にオーダーメイドでアンプを製作している。定番のODSであっても、出力を変えたり、センド/リターンを設けたり、グリルやトーレックスの種類や色、柄を指定したりといったカスタム・オーダーが可能で、いわゆる「自分だけの1台」が実現可能だ。
しかし、本当の意味で「自分だけの1台」とは、やはりサウンドのイメージからスペック、パーツやデザインまですべてを指定したアンプではないだろうか。
今回ご紹介する「Area 67-B」は、これまたTARGIEではお馴染みのVANZANDT FREAKさんがAKG工房にフル・スクラッチでオーダーしたアンプである。
ギタリストなら一度は夢見る「マイ・オンリー・アンプ」はどのような過程を経て実現したのだろうか。
ほぼ完成というところまでこぎ着けた2011年夏、岩手県一関市の工房でオーナーと製作者に話を聞いた。
■ オーダーのきっかけと、どんな要望をされたのか、聞かせてください。
VANZANDT FREAK(以下VF)「長年色々なアンプを試してみて、そのどれでもない、自分だけのサウンドが欲しい、と思ったのがやっぱり一番のきっかけです。当初はフェンダーとマッチレス両方のサウンドが出せることを目指したのですが、AKGさんに相談したところ図体が馬鹿でかくなるし、値段も高くなりそうなので断念し、どちらかというとブリティッシュな、でもブリティッシュ風味のフェンダー…、なんというかVOX系のグラッシーなクリーンを出せつつ、ミッドに腰のある十分な歪みも出せるというサウンドに決めました。」
AKG「…そう言われてもダンブル系の音を追求してきた私には、全くピンと来ない(笑)。仕組みとしてはこれまで手がけてきたダンブルないしフェンダーとは、まずパワーアンプの作り方が全く異なります。それは電気的に色々検討し仕様を固めたのですが、不安だったのは最後の音色の追い込みです。とにかくそれに近いアンプの音源を山ほど送ってもらって、音のイメージを固めていきました。」
■ ほかにはどんな要望をされましたか?
AKG「まずは、デザイン(笑)。最初にサイズを12インチのコンボと決め、その上でどこにもないデザインをということでした。何となく「寄せ木」みたいな感じにしようということになり、3案ほどデザイン案を送ったでしょうか。最終的にはそれらを煮詰めていって、8案ほどに膨れあがり、最終的にデザインが決定しました。」
VF「12インチコンボのサイズもFender-Deluxeの容積にマジックがあると信じて同じサイズにしました。また、パーツの選定にもこだわりました。ぼくは全然電気的な知識はないので、単に見た目で(笑)中のコンデンサーをマスタード色のものにして欲しいと頼んだのですが、AKGさんに却下され、オレンジドロップに落ち着いたり、スピーカーも軽量で音が良いという評判のエミネンスにしようと考え、エミネンスのサイトで数あるスピーカーの音源を全て聴いて選んだり、という感じです。」
■ デザイン、確かにユニークです。
VF「TVフロント、なんだけど、ハードウッド(笑)。」
AKG「銘木店を経営している知人から良い材を仕入れることができたので…。ブビンガと長期間エアドライされたフィギュアード・メイプルで仕上げました。」
VF「AKGさんには、意味がないと嫌がられましたが、バックパネルや底板までエボニーも使った寄せ木のデザイン!(笑)」
■ 仕上がりはいかがですか?
VF「想像以上のサウンドで、非常に満足しています。真空管をひいひい言わせているちょっとダークな歪みの感じ、イメージ通りのブリティッシュな音が出ています。Boost回路についても十分なGainを稼ぎながら、ギター側のVolを絞るとクリーンになるという難しいお題もクリアできましたし、またスピーカーの選定も間違っていませんでした。」
AKG「まあ、音については最後の最後まで悩みましたが…」
VF「でもね、昨日の夜に音出しをして、課題を洗い出して、今日にはそれが解決されているという。凄いですよね」

コントロールは左から、GAIN,OVERDRIVEスイッチ,TREBLE,BASS,MASTER。
■ AKG工房にアンプをオーダーする場合の予算と納期を大雑把で良いので教えていただけますか?
AKG「18Wのヘッドを想定しますと、ご予算は20万円くらいから、納期は4ヶ月ほどとお考えいただければ。」
■ 最後に、オーダー・アンプの醍醐味について、聞かせてください。
VF「音の好みもこだわりも、好きな音楽やギター・機材の遍歴と共に変わっていくものだと思います。そのこだわりを全てとは言いませんが、見た目も含めて実現できるというところが何といっても醍醐味だと思います。逆に言えば、『全てお任せ』というような人だと、喜びも半減しちゃうかな、と。」
AKG「だからといって、アンプの仕様や電気的な知識を持っていないとオーダーできない、ということではないんです。VFさんのようにサウンドのイメージを音源で伝えてもらったりしてもいいですし、音に影響のあるパーツについて尋ねてもらってもいいです。あと、コントロールの回路も色々オリジナルのものを持っているので、私から機能や音の感じに関してご提案差し上げられることもあります。オプションでこんな機能が欲しい、というご要望も大歓迎です。」
最後に、VFさんのオーダー・アンプ「AREA67-B」の仕様は以下の通り。
出力: 18W, CLASS-A
プリ管:12AX7×4
パワー管:EL84×2
コントロール:GAIN、TREBLE、BASS、MasterVol、Boostスイッチ(Gain、Levelをそれぞれ設定してフットスイッチでON/OFF可能)
スピーカー:エミネンス・ガヴァナー(12inch)
<音源サンプル>Collings 360 (Lollar Mini Hambacker) Bacchus ST model Provision TE model Getto Mod