六弦一会

六弦一会

2006年より掲載されていた音楽ライター細川真平さんのコラム「六弦一会」から、一部を再掲載いたします。
今読んでも色々と含蓄のある、考えさせられるとともに共感できる内容です。


第8回 世界に広がるジャパン・ヴィンテージの輪

2007年03月14日

ちょっと必要があって、トーカイについて調べていた。
トーカイは日本のギター・メーカーで、東海楽器製造株式会社が正式名称。
’70年代後半から’80年代にかけて、この会社が作るフェンダー・ストラトキャスターや、ギブソン・レス・ポールのコピー品が国内外で評判を呼んだ。
アメリカではフェンダーから訴えられ、ヘッドの形を変更せざるを得なくなるのだが、それはフェンダーがその製品の質に恐れおののいた結果だとも言われている。
’80年代初頭、フェンダー・ジャパンができるときにも、フェンダーはトーカイに話を持ちかけていたらしい(この前訴えておきながら……という気もする)。
結局は、やはりグレコ・ブランドで秀逸なストラト・コピーを作っていたフジゲンとの間で話がまとまったのだが。
トーカイのストラトと言えばスティーヴー・レイ・ヴォーンも使っていたし、最近ではオアシスがレコーディングで使っているそうだ。また、ロバート・フリップが愛用しているレス・ポールはギブソンではなくトーカイ製だ。
トーカイだけではなく、グレコや初期の(フジゲン製)フェンダー・ジャパンなどは、今では“ジャパン・ヴィンテージ”と称されて希少価値が出、中古価格も値上がりが続いている。

さて、なぜこんな話を書いているかというと、いいサブ・ギターが欲しいのだ。
メインで使っている’65年製ストラトに少しでも近い音がするストラトが。
それで、我がギター・グルに相談した。
ピックアップ、コンデンサー、線材などを換えて、なんとか新しいギターをヴィンテージに近づけることはできないものか、と。
答えは、「ぼくもずいぶんやったけど、結局ダメなんですよねえ」。
やはり、木が問題なのだという。
いい木が時間を経ることによって作り出す音。
これはもう、どうしても作り出せないと言う。
可能性としては、’80年前後の国産ギターを基に改造するしかないだろうとのこと。
いい木を使っており、しかもそれが30年近くも熟成されている。
加えてレプリカ度も高く、加工精度も高い。
こんなことなら、’80年代に買ってそのまましまいこんで置けばよかった……。
てなことを言っていてもしょうがないので、そのころのギターについていろいろ調べているのである。

あ、それでトーカイの話に戻るのだが。
トーカイのマニアは海外に今でも数多くいるようだ。
“Japanese Vintage”の流行は、どうやら世界的な動きらしい。
で、こんな海外サイトを見つけた。
http://www.tokairegistry.com/
内容は、トーカイ製ギターの年代ごとの仕様、特徴、シリアル・ナンバーの見方、過去のカタログ、広告やレヴュー、サイト・ユーザーからのギター投稿写真、等々。
そして、データベースを作るためにあなたのトーカイ・ギターを登録してほしい、というかなりマニアックで深いサイトだ。
興味のある方にとっては、かなり面白いと思うので、ぜひご覧ください。

↓これはSRVが表紙になったトーカイのカタログです。